Steady as You Go ~変化対応の広報コミュニケーション

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Steady as You Go ~変化対応の広報コミュニケーション

近年の急激な社会変化に対応すべく、様々な企業や団体のコミュニケーション組織は今、大きな変革を起こしています。IABCに関与しはじめて特に驚く事は、海外の企業における社内コミュニケーションの認識の高さです。サバンナの動物や渡り鳥の群れのように、ひとたび何かあると組織全体が即座にアクションをとらなければ社会信用はおろか、存在そのものにも影響を及ぼしかねない状況に来ているからです。その原因の一つに、ソーシャルメディアの発達、あるいはその伝播速度がある事は間違いありません。

IABCの会員誌CW(Communication World)でも関連の寄稿が増えています。日本企業でも生産現場や販売拠点などグローバル対応が必須なところも増えてきています。このレポートも数々のヒントと示唆に富んでおり、とても参考になります。

北米カナダのRoyal Bank of Canada(RBC)にてインターナルコミュニケーション及びオンラインエンゲージメント担当マネージャーを務めるSadlowski氏とRBCInsurance社にてインターナルコミュニケーション担当シニアマネージャーであるFletcher氏。CW(隔月発行の冊子)2011年3、4月号には両氏がRBC社の「組織変革コミュニケーション(Organizational Change Communication)」チームの14年の経験・洞察から、企業内における変化対応のコミュニケーションの成功要因について寄稿しています。

1. 対策チームを編成する
社内での変化、改革を浸透させるためには、担当チームの編成とマネジメント層内の理解者が不可欠となる。チーム構成や規模は変化によって影響を受ける社員数や社外機関も関わるかなどで判断をする。チームの内訳は、営業や人事、法務など様々な部署、社外の関与者(カスタマー、アウトソーサー)、短期間またはプロジェクト期間を通して携わる人など。

2. 社員にとって寝耳に水はNG
社内で何か新たなことが起こるときは、先ず種をまいて徐々に起こしていく必要がある。変化対応に長けたリーダーは、数ヶ月前から少しずつメッセージ出し始め、中、 長期的に企業が業界でどのような位置づけにあるのか社員を教育し、なぜこのような変化がおこるのか社員が理解できるように努める。

3. あらゆるステークホルダーを視野に入れる
ステークホルダーを分析し、反感を覚える可能性がないか、あるいは理解し協力してくれるかなどを考える。コミュニケーターは、日々それぞれ別の業務をしている部署が企業全体あるいは別部署へ与えうる変化の影響を認識し、彼らが懸念しうる要素を割り出しておく必要がある。

4. 3段階のアナウンスをおこなう
変化、改革などが社内に起きる際には、「事前」、「当日」、「事後」の3種類のアナウンスが必要。この3段階のアナウンを行うことは、どのようなオーディエンスがいるのかを想定したり、当日のアナウンスに影響をあたえる可能性のある要素を事前に割り出さねければいけないだけでなく、当日アナウンス後の対応にまで目を配ることが不可欠となる。当日のアナウンスで仕事が終わったと思ってはいけない。

5. タイミングがすべてを左右する
決算発表日、金曜日、海外事業所においてはその国における宗教特有の祝日など、締め切りが集中する繁忙期など、考慮すべきことが増えてしまいそうな日は避ける。

6. 漏洩は起きるもの。肝心なのは備えているかどうか。
いざというときのための準備・対応セットのようなものがあると良い。Q&A,自発的リークの戦略、いざというときに社員、関係者に送るメールの雛形、想定される憶測などに対する返答、株主に対する説明責任、法律的な問題の有無の確認など事前に準備しておく。

7. インターナル、エクスターナルコミュニケーション双方を先導する
インターナルを前提としたメッセージはたいてい社外の者の知るところとなる。ブログ、ツイッターなどが普及した現在ならなおさらのことで、そのような文書を書くときは社外の者も読むとういことを念頭に置くくらいが良い。更に社外のオーディエンス、関係者にとっても当該企業から直接知らされることが一番望ましい。

8. 直接対話がベスト
特に会社にとっても、社員にとっても厳しい内容であればあるほど、Face-to-Faceで伝えることが一番であるし、そのとき社員から反感を買ってしまったりするとその後の企業の評判や評価にも影響する。海外の支社などFace-to-Faceが無理な状況であれば、電話会議/ビデオ会議などを代用したい。

9. コミュニケーターとしてやるべきこと
各マネージャーにもコミュニケーショントレーニングを実施したり伝えるべきメッセージの準備をしておく。メッセージと伝える際の対話はその後を左右する。

10. 変化、改革の「アナウンス」は結果報告ではなくコミュニケーションの始まり
4番の3段階のアナウンスのうち、3つ目である事後アナウンスの時期にさしかかると、 編成チームも様々なプロジェクトチームや各部署のリーダーごとに細分化し、それぞれ社員のフィードバックや、質問などを集め、Q&Aを作成したりすると、コミュニケーションの流れも滞らず対話も止まらない。また社内の懸念や新たな問題なども見
えてくる。

変わったものとはなにか?
上記の10項目はほぼ普遍的な原則であるが、それらに影響を与える要素で唯一変わったものがあるとすれば、それは「情報技術」である。発信するメッセージは即時に伝えられ、また社員相互で共有、意見交換が可能になるということにより、企業として取るべきアプローチもそれに適応する必要がある。当然社外ともシームレスにつながってしまう訳で、都合の悪い事だけ「くさい物にはフタ」ではすまされない。さまざまなツールを活用し、双方向のコミュニケーションを積極的にとるべきである。だが、 技術はFace-to-Faceのコミュニケーションに代わるものではなく、それをさらに強化するものだと認識すべきである。「もうメールで伝えてあるから」ではすまされない。

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IABCでは世界中のメンバーが会報、ウェブ、カンファレンスにおいて企業コミュニケーションに関わる提言をし、意見交換を行っています。私達ジャパンチャプターでも企業、エージェンシー、学界の枠を越え様々な議論を重ねています。また、それらを海外の仲間に投げかける事でさらなる気づきを得る機会があることが魅力です。もし皆さんが企業や組織のコミュニケーションの課題を解決したいとお考えであれば、IABCには解決のヒントがあります。広報に限らず、マーケティング、CSR、人事、経営などさまざまな分野の方が集まってきています。職能ではなくコミュニケーション課題の解決から、一緒に考えてみませんか?

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