IABCワールドカンファレンス2011 San Diego 参加記(3)IABCジャパンチャプタープレ ジデント 雨宮和弘

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ワー ルドカンファレンスは大まかに申し上げますと3日半のスケジュールで90近く のセッションと朝や昼にキーノートスピーチ、そして地域や役割ごとの分科会、レセ プションパーティーなどで構成されています。希望者には朝7時からヨガのクラスまであり、い たれりつくせりです。

キーノートは団体外から毎年ワールドプレミアクラスのスピーカーを集め、一流のプレゼンテーションを聴く事が出来ます。これもとても刺激的な事です。

今回もたくさん興味深い話を聞くことが出来ました。

1. 「How we decide: The new science of decision making」Jonah Lehrer

ジョナ・レーラーさんはコロンビア大学で神経科学を専攻した後、英国オックスフ ォード大学に留学し現代文学を学んだ多彩な方で、日本でも「一流のプロは感情脳で 決断する」という本を出版されています。

このスピーチもほぼその本に添った形の内容で、迅速な判断や意思決定にこそ、自身の感情に訴える必要があると説いています。逆説的にも思えますが、 「デザイン」や 「センス」など感情値をどう伝え、評価するのかを常に考えていた私にとっては、その根拠を科学している方の「自らの感情に訴える事で、的確で最良の決断が 早くできるようになる」というメッセージは新鮮で心強く感じました。
やはり専門用語の多いスピーチは大意を受け取るのが精一杯ですが、上記の本をさっそく呼んでみようと思いました。

2. IABC’S 2011 EXCEL Award winner Deborah Tarbart

コミュニケーションリーダーシップ(EXCEL)賞はIABCが授ける最高の栄誉の一つで、IABCメンバー以外の優れたコミュニケーション・リーダーシップを発揮する人物を表彰するものです。

過去20年間、デボラ・タルバートさんは、過去20年野生のコアラの生態系保全を行ってきました。世界中にコアラを取り巻く現状と保全に向けた活動 の理解を取り付けるためにKoalaMapと呼ばれるオンラインコミュニティを作るのみならず、コアラに興味を向かせるコネクションポイントがどこにある かを調べ、まるで神経細胞もうを作るようにネットワークを作っていきました。たとえば日本にコアラのマーチというポピュラーな菓子があると知ると、ロッテ と恊働プロジェクトを起こすなど。「伝わる」コミュニケーションの規範を示すこと。それが評価されるコミュニケーション・リーダーシップの所以かもしれま せん。

3. 「Half the sky: Turning oppression into opportunity for women worldwide」Sheryl WuDunn

「ハーフ・ザ・スカイ」とは中国の古いことわざで、空の半分は女性が支えているという意味です。

シェリル・ウーダンさんは人身売買と強制売春、集団強姦をはじめとする性別にもとづく暴力、妊産婦死亡という世界の女性に対する三つの悲劇に焦点をあて、その啓蒙活動を行い、ピュリツァー賞を受賞しています。
20世紀のすべての戦争で殺された男性よりも、過去50年間に「性差に基づく殺人」で失われた女性の命が多いという衝撃的な事実をレポートしました。しか し彼女のスピーチは単にその惨状と理解を訴えるだけではなく、「健全な社会の醸成に女性の力が解決策になる」というメッセーjを伝えてくれました。前にも 書いたように、IABCのカンファレンスは6割強が女性。そして様々な話題を話す上で、非常に常識的で心地よい印象を得るのは偶然とは思えません。翻って 日本の多くのコミュニケーション関連の方が集う場は、まだまだ男性中心で、多くの可能性をスポイルしているのでは?と感じるのです。シェリルさんのスピー チや著作も、様々な場で日本語で読む事が出来ます。

4. 「MOJO: How to get it, how to keep it, and how to get it back if you lose it」Dr. Marshall Goldsmith

マーシャル・ゴールドスミスさんは、GEのジャック・ウェルチさんのパーソナルコーチを務めるほか、フォーブスなどで「世界の15の最も影響力のあるビジネス思想家」の一人に選ばれた方です。

「モジョ」は、ブルースや映画「オースティン・パワーズ」などでは魔力や魅力などととらえられていますが、ここでは「明確な目的をもって、力強く、 ポジティブに物事を行っており、それを他者に認めてもらっている状態」と定義しています。マーシャル・ゴールドスミスさんは、「仕事を楽しみ、やりがいを 感じると同時に、その経験を他者に伝えているとき、Mojoのレベルは最高になる」とおっしゃっていました。とにかく明るいプレゼンテーション。そしてク ロージングスピーチにふさわしいポジティブな空気を作り出してくださいました。
参加者全員に最新の著作が配られたのですが、なんと!全てに直筆のサインがついていたのです。
来月早々には日本にも来日するとの事。私達のメンバーもスピーチの後、挨拶に行き、気軽に対応された事に感動していました。

専門家を迎えた議論のみならず、トップレベルの提言やプレゼンテーションにふれられるのもIABCワールドカンファレンスの価値の一つです。