『ミッションからはじめよう!』 並木裕太

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社内コミュニケーション・企業理念・企業文化に関わる書籍を紹介しています。今回取り上げるのは『ミッションからはじめよう!』 並木裕太 ディスカバーです。
 著者の考えの枠組みは、仕事で実際に成果を出すためには、次の三つのステップが必要だというものです。
① MISSION(ミッション)
② LOGIC(ロジック)
③ REALIZE(リアライズ:実行)
 これ自体は何の変哲もないものですが、著者のかなり強烈な問題意識は、いかに多くの仕事が③を完遂しないまま終わるか、というところにあります。別の言い方をすれば、③を実現しない①や②には価値がないということです。しかし、何故そうした事態に陥ることが多いのか、それは①のミッションがしっかりしていないからなのです。
 それでは、そもそもミッションとは何か?
「 自分たち (会社、部署、もしくはそのときのプロジェクト) の目指す姿や提供する価値を定義したもの 」 で、すべての判断基準になるものです。
 うーん、あくまで当たり前ですね。しかし、その都度ミッションを考えている仕事がどれほどあるでしょうか。これは反省してみる価値があると思います。ミッションが曖昧なまま、手を付けやすいところから何となく始めてしまう仕事、けっこう多くないでしょうか?自戒も込めて。
 そこで著者はミッションの作り方を指南します。それは
「 “誰に” “どんな価値” を提供し、“最終的にどんな状態” になっているか 」 がすべて入っており、「 エビデンス (証拠) によって支えられた、ファンクショナル (機能的) なベネフィットと、その機能によってもたらされるエモーショナル (感情的) なベネフィットに基づく 」 ものでなければなりません。
 それでは順番にみていきましょう。
① エビデンスを洗い出す
 想いを実現するにあたり求められる、自分・自分の部署・会社のいままでの実績や強み、また今後持っていかなければならない強みを洗い出す。
② ベネフィットを決める(ファンクショナル/エモーショナル)
 ベネフィットとは、提供する価値のこと。その商品なり、サービスによって、提供できる価値を決める。そのとき、誰にとってのベネフィトか、というターゲットを意識することが大切。
③ ミッションとして表現する
 ここまで整理してきたエビデンスとベネフィットをまとめて、価値や実現したい状態として、ひとことで言うとどうなるかを表現してみる。
 これ以上の詳しいノウハウは、本書を読んで確認をしてみてください。私自身、以上のプロセスにしたがって、試しに自分の属するチームのミッションを作成してみましたが、よかったと思います。特に、エビデンスの洗い出しによって、自分の仕事を客観的にみることができたし、意外にこんなによい点 (強み) を持っていたのだ、という気づきがありました。また、ベネフィットを考えることにより、漠然としていた仕事のターゲットを明確に意識できるようになったと思います。
 しかし、ミッションをつくっただけでは、まだスタートラインにすら立っていません。ロジックにより仕事の道筋をしっかりつくり、リアライズのために多くのヒト・モノ・カネを巻き込む必要があります。本の後半では、そのための多くのフレームワークが紹介されています。そのなかで著者が幾度となく強調するのは、ロジックとは、やりたいこと (ミッション) を実現させる (リアライズ) ための道具に過ぎないということです。著者は、もともとコンサルタント出身とのことですが、コンサルタントの仕事は基本的にこのロジックのパート、課題の整理に留まる・・・リアライズまで踏み込めなかった、そのもどかしさからこの本にあるような新しい仕事のあり方を模索するに至ったようです。
 その裏返しになると思いますが、コンサルタントに仕事を依頼する事業会社の立場から考えてみます。そうすると、ミッションが不明確なままコンサルタントに課題の整理と解決策を依頼し、あがってきたものを自分のものにしようともせず、つまり実現させる努力もしないで、結果が上がらないことをコンサルタントのせいにする、という構図が浮かび上がってこないでしょうか。いわゆる仕事の丸投げですね。どうしてこのようなことが起きるかというと、企画といわれる仕事が、それだけで完結していると思われているという事情があるように思います。本来は、ロジックのパートに過ぎないのに。外注する、しないは副次的なことです。リアライズまでいくことが鍵なのです。
 この本では繰り返し 「インスピレーションとリアリティ」 という言葉が出てきます。あなたの仕事には、インスピレーションとリアリティがありますか?“あなたの仕事” にインスピレーションとリアリティを吹き込むことができるのは、あなた自身をおいて外にはいない、ということを肝に銘じるべきだと、この本は教えてくれています。そして、そのためには自分自身の想いを込めたミッションを作成することが重要だというのが結論であり本書のテーマなのです。

【今回紹介した本】
並木裕太(なみきゆうた) 『ミッションからはじめよう!』 ディスカバー, 2012

下平博文
IABCジャパン 理事
(花王株式会社)