業務範囲

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『体系 パブリック・リレーションズ』 には、PRの専門家の業務範囲として10のカテゴリーの仕事が列記されています。内容は特にどうということはないのですが、リストの存在そのものが新鮮な感じがします。多少書き替えて紹介します。

1.<文章作成と編集作業>:ニュースリリース、社内報、ウェブサイトや他のオンラインメディア、スピーチ、映像・プレゼンテーションなどの原稿の作成。

2.<メディア・リレーションズと記事化>:報道機関、出版社、フリーランス・ライター、業界紙・誌などのメディアに対し、組織体に関する、あるいは組織体が発信するニュースや特集を、発表または放送させる目的でコンタクトをとる。メディアからの問合せに対応する。取材の求めに応じる。内容の確認に応じる。

3.<調査>:世論やトレンド、話題になっている問題、政治的な風潮や法律の動向、ステークホルダーに影響を与える可能性のある事柄について情報を収集する。必要があれば調査を実施し、そのプログラムを設計する。

4.<マネジメントと管理>:PRのニーズの特定や優先順位の設定。対象とするパブリックの特定。目的と目標の設定。戦略と戦術の開発。実施の計画立案と人事、予算の確保、スケジュール管理。

5.<カウンセリング>:経営トップに対して、社会、政治、規制などをめぐる環境について助言をする。経営者とクライシスの回避方法や対処方法について議論をする。クライシスや対応が微妙な問題をマネジメントするため、鍵を握る意思決定者と共に働く。

6.<特別イベント>:記者会見、株主総会、コンベンション、記念祝賀行事、テープカット、資金集めのイベント、要人の訪問の受入れ、コンテスト、表彰式その他の式典などの準備と運営。

7.<話すこと>:自らオーディエンスの前に立つ。その一方で、スピーチのもつ役割について他者を指導し、スポークスパースンをマネジメントする。

8.<プロダクション業務>:デザイン、映像、マルチメディアの知識とスキルを駆使してコミュニケーションを創造する。

9.<トレーニング業務>:役員や他のスポークスパースンに対し、メディア対応や公衆の面前に立つためのトレーニングを行う。組織内部の他者に文章力やコミュニケーションスキルを強化する援助を行う。

10.<問合せ窓口>:メディア、コミュニティ、その他内外からの窓口として機能する。組織体と重要なステークホルダーとの間の調整役として、意見を聞き、交渉し、対立を避け合意の形成に努める。案内役としてゲストや訪問者を接遇する。

組織によっては、一人で全てこなしているという人もいれば、細かく役割が細分化されているところもあるでしょう。著者は、特に優先順位をつけているわけではありません。それは「組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持する」というPRの定義と、自社(組織体)の現状を念頭において、各社・各自が考えるべきものだからでしょう。いま優先順位といいましたが、「強み‐弱み」や「自前‐アウトソース」という軸で考えてみても面白いかもしれません。とはいえ、これがなくては何も始まりも (終わりも) しないという意味では、4の<マネジメントと管理>がPRのコアとなる業務だと考えます。

スコット・M・カトリップ、他 『体系 パブリック・リレーションズ』 2008, ピアソン・エデュケーション

下平博文
IABCジャパン 理事
(花王株式会社)