エンゲージメントというコンセプト

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少し前の話しですが、4月21日の日経新聞の経済教室に、若林直樹京都大学教授による 『忠誠心は業績を上げるか?』 と題した記事が掲載されていました。ポイントとしては、■会社への一体感や仕事への関与で業績向上、■急激な人事改革は裏切りと取られ士気低下、■帰属意識の業績への影響は国により異なる、の3点が挙げられていました。このなかで紹介されていたのがエンゲージメントという概念で、該当する文章を引用してみましょう。

《米ボストン大学のウィリアム・カーン教授は従業員のエンゲージメントという理論を提示し、肉体的にだけではなく、心理的にも感情的にも社員が仕事に求められる役割内容に打ち込んでいる方が、個々人の業績が高くなり組織の業績も上がるという見方を示した。ビジネス調査機関コンファレンス・ボードの調査でも、従業員のエンゲージメントが高い会社は低い会社より営業利益で3.74%、純利益で2.74%高い》

じつは、このエンゲージメントという言葉は、私が参加した一昨年のIABCのワールドカンファレンスでも最も頻発していたものでした。その一端は、以前のレポートからご覧いただけます。
https://iabc.jp/2013/07/26/2186/

その事例のなかで、調査で日本でも有名なギャラップ社の開発した社員のエンゲージメントを計る12の質問というのが紹介されていたので、少し調べてみました。このギャラップ社の取り組み、というかアプローチは日本語の書籍になっています。

『まず、ルールを破れ』日本経済新聞出版社2000

そこにはこの12の質問も日本語で紹介されていますので、ここに引用をします。

1. 仕事の上で自分が何をすべきか、要求されていることがわかっている
2. 自分の仕事を適切に遂行するために必要な材料や道具が揃っている
3. 毎日、最高の仕事ができるような機会が与えられている
4. 最近一週間で、仕事の成果を認められたり、誉められたりしたことがある
5. 上司や仕事仲間は、自分を一人の人間として認めて接してくれている
6. 仕事上で自分の成長を後押ししてくれる人がいる
7. 仕事上で自分の意見が尊重されている
8. 自分の会社のミッション/目的を前にして、自分自身の仕事が重要だと感じている
9. 仕事仲間は責任を持って精一杯クォリティーの高い仕事をしている
10. 仕事仲間にだれか最高の友だちがいる
11. 最近半年間で、自分の進歩に関して助言をしてくれた人がいる
12. 最近一年間に、仕事の上で学習し、自分を成長させる機会があった

書籍ではこれらの質問、あるいはそこから得られた回答を組織はどのように活用すればよいのか詳しく論じられていますので、関心を持たれた方は参照してください。

このエンゲージメントというコンセプトに端的に表れているように、近年コーポレート・コミュニケーションの領域と人材開発、とりわけ組織開発の領域が近接してきたといえるでしょう。これは、コミュニケーションの新しい貢献の可能性を示唆していると思われます。