変化の大きい時代の戦略的コミュニケーションを再考察する

IABC's contents (Japanese)

2017年2月1日 ジョナサン・チャンプ

生活の糧として言葉を用いる人として、コミュニケーターは時々同一の事象に異なる定義付けをして結び付けなければならない。私たちはコミュニケーション戦略に基づいて仕事をしている。私たちは経営戦略をサポートするためにコミュニケーションプランを作る。私たちはコミュニケーションの役割をより戦略的にするために努力している。さらに、私は「戦略的(strategic)」という言葉の語源が戦争であることから、用語の使用に異を唱えるコミュニケーターも知っている。代わりに気持ちを刺激しない「戦術(tactic)」と用語を変えるのも当たり前である。

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本記事においては、以下のように定義づけする。
 経営戦略:今後3~5カ年の、社内・社外に対して発表する経営(もしくは部署)の大きな方向性。
 戦略プランニング:戦略を策定するためのプロセス。通常、予算と連動する。
 経営プラン/実行プラン:戦略実行に寄与する予算と活動。
 コミュニケーション戦略:経営戦略の実行をサポートする、コミュニケーションの大きな方向性。
 コミュニケーションプラン:ターゲットとして定めた成果を遂行するための一連のメッセージ、方法、戦術。
※注:我々業界の一部では、「コミュニケーション戦略」と「コミュニケーションプラン」を互換的に使用している。

流れはどんどん早くなる。取り残されないように
政治の世界での1週間が長いならば、ビジネスでの3年は永遠である。技術、社会、政治そして経済の変化スピードは急速で、Brexitといったグローバルイベントが象徴するように、時折予測もつかないことが起こる。グローバルリーダーの決断は、事前の通知なしに、合議を経ずに全ての産業にインパクトを与えることが多い。
企業の従来の戦略プランは、3~5カ年の成長青写真である。ちょっとだけタイムトラベル実験をしてみよう。あなたが2013年のスタートにおいて、3~5カ年の経営戦略を議論する場に、同僚とタイムトラベルしたとしよう。市場を形成する流行、労働環境、競合関係など仮定していることだろう。
さて、現在のビジネス環境を見渡してみよう。2013年初頭に優先事項、ビジネスの推進力として挙げたものは、今日どれだけ残っているだろうか?混乱や地震劇的な転換などが新しい基準値となった。今日、多くの産業や業種にとって戦略的な判断を要する事項は、ほんの3年前に懸念されていたものと明らかに異なっている。

変化の大きい時代、コミュニケーターはどのように戦略的対応を打ち立てるか?
最悪の場合、コミュニケーション戦略は部門の給与や予算を正当化するためのものとなり、組織のビジョン、ミッション、価値感に適合させて、組織の年間計画の一部として策定され、残りの期間は文書管理システムに成り下がるのである。
どうしたらこれを良くすることができるのか?

プランニングチームの構成員になる
ビジネスリーダーたちが戦略プランの策定フェーズに入った時、プランニングチームへの参画に手を挙げよう。組織によって、戦略プラン策定は専任の戦略チームの事項か、エグゼクティブチームの通常プロセスの一部、もしくは、CXO(COO、CEO、CFO、CTO、CSO、CIOなど「一人のエグゼクティブ」) の専権事項かもしれない。彼らに協力するのである。『経営戦略をコミュニケーションする』ことを、策定会議が終わった後に自分のチームに課せられる簡素な指示で終わらせてはならない。策定会議メンバーになるのだ。さらに良いのは、戦略プランの決定プロセスをファシリテーションすることだ。コミュニケーションリーダーにとって、イベント企画運営は非常に戦略的な活動になり得る。もしそのイベントが企画会議であって、コミュニケーションが戦略遂行にいかに役立つかというアジェンダに貢献する事がその範囲に含まれているならばこうすることにより、技術やAI、労使関係、グローバル化する労働力、信頼、そしてエンゲージメントといった外部の潮流を検証しつつ、職場で段々実践されていることをコミュニケーションによって俎上に上げることができる。

戦略は成果ではなく、プロセスである
戦略は生き物である。戦略は経営における優先順位、資源配分、製品・サービス開発、従業員を関与させ、力づけ、そしてステークホルダーとの関係性の定義などの指針を与えることとなる。コミュニケーションリーダーとその役割は、戦略浸透の各ステージにおいて付加価値を与えることができる。戦略を伝達して浸透できるように、仕事の優先順位を付け、助言を与え、フィードバックを促進する。

「策定して終わり」をやめなければならない
これからの仕事は、変化する事業環境の中で、組織が適応したり、重要事項と判断したりする敏捷性や能力がより求められてくる。そして、それらは非常に早く変化する。コミュニケーションが持っている機能である、リアルタイムのフィードバックを得る手段、どの聞き手にメッセージを届けるべきか知っていること、協業を育成すること、つながりは優位に働く。これらは、戦略浸透のために組織が積極的に動くことを可能とする機能である。

戦略プランニングと利益の関係を理解する
組織はその目的ゆえに存在するものであり、大多数にとって、その目的とは会計上の利益である。戦略プランニングのプロセスは、実行能力の育成や、外部要因への対応や、問題・リスク・実務対応の最小化をもって、目的を実行するために組織にくまなく指示を与える。コミュニケーションの機会とは、私たちの専門的なツールや機能を通じて利益に貢献することである。戦略プランの各要素において、コミュニケーションを俎上に上げることができるのは何か?

戦略をコミュニケーション vs 戦略を浸透させる
あなたを含むリーダーたちとの協働により経営戦略は策定された。次にどのビジネスにおいても、今後(通常は年間)の実行プランを決定する。私たちの仕事が順調に進んでいれば、組織が広義のゴールを達成するためにコミュニケーション計画やコミュニケーションの主導権が経営プランに盛り込まれているはずである。しかし、多くの場合、この時点で経営陣はあなたに「戦略をコミュニケーションするように」と命じる。
経営戦略にコミュニケーション戦略を盛り込むことはコミュニケーションの生命線であり、そのうちの一部分のみ注力すべきものではない。経営戦略を指針として、成果を出すため、受け取り手、物語、メッセージ、方法といったあなたのスキルや専門性を活用しよう。

戦術を戦略に引き上げる
ここまで、コミュニケーション戦略と経営戦略をどのようにして同一のものとできるか、また同一であるべきかを楽観的な視点から述べてきた。今後を見据えて、あなたはリソースを得るとともにチームを創り上げ、経営戦略にコミュニケーション戦略を組みこむ核となる要素を確立してきたことと思う。
ここで実務の現実が(想像上の)ドアをノックする。それはメールや電話や会議での要望としてやってくる。「○○(リーダー名)が○○(戦術)を求めている」。交渉の余地のない指示であり、すべてのコミュニケーターが直面するものである。あなたならどうするか?
• 指示に戦略的な関連付けをし、経営戦略との関係を確立する。
• 戦術の実行が、戦略実現へ別の方法で貢献する新たな試行機会であるかどうか判断する。
• 指示を出したリーダーと戦略的な会話をする。あなたが経営戦略を理解していることを示し、これがどのようにその指示をサポートしているかを問う。交渉するのだ。
経営戦略にフォーカスすることは効果的であると発見したことはありますか?コメント欄で、合わない戦術を経営戦略に合わせるアイディアや経験をシェアしてください。

Jonathan Champ

ジョナサン・チャンプ
ジョナサンは企業コミュニケーションを支援している。Meaning Businessの創業者であり、Shorter COMMS Planのクリエイター。組織やコミュニティ、NFP分野でのコミュニケーション変革、リーダーシップ、エンゲージメントにおいて20年のキャリアがある。ツイッターIDは @meaningbusiness.で、ハッシュタグ#commsについてツイートしている。
出典元:http://cw.iabc.com/2017/02/01/rethinking-strategic-communication-for-changing-times/