レピュテーションを積極的に管理する10の方法
2017年5月2日 ヒース・アップルバウム
規模の大小を問わず、すべての組織は毎日のようにレピュテーション・リスクに直面しているが、ほとんどの場合は十分に事前の備えがされていない。現在、脅威はマウスの1クリックで起こり、数秒で世界中に広がる。ユナイテッド航空やペプシの例で、あっという間にコントロール不能になり、企業利益に甚大な損害を及ぼしたか記憶にあるだろう。
論争が巻き起こると、消費者や投資家からの信頼が損なわれ、株価はしばしば下落し、消費者は競合商品を選択し、人々は別のどこかへ寄付し、時価総額の下落はCEOの罷免になる。
企業の次なるレピュテーションの悪化や失墜はあらゆるところから起こり得るもので、しばしば組織内からもたらされることもある。それゆえ、企業は組織全体が巻き込まれるような激しい炎上となる前に、くすぶっている問題を認識し、対処することが肝要である。業務評価のための360度リスク監査や、ステークホルダーとの関係評価を積極的に行うことが重要である。さもないと、組織は自らの考えで盲目になってしまいがちになる。
簡単に言うと、測定していないことは管理することができない。レピュテーションは常に変動するため、継続的に測定しなければならない。レピュテーションは組織の行動や業績やコミュニケーションによる影響だけでなく、競合や活動家グループ、ステークホルダーからの期待の変化によるネガティブな影響があることを認識することも重要である。
レピュテーション・リスクは様々なところからもたらされる
レピュテーションを向上させたり、毀損させたりするカギとなる事項は数多くある。製品やサービスの質、リーダーたちの品行、社会的責任へのコミットメント、従業員の待遇、そして、組織がどの程度透明性があり、信頼でき、敏感かなどである。
事前の備えをしていない組織は、しばしば壊滅的損害と非常に高額の賠償金という厳しい道をたどることとなる。残念なことに、私はすでに損害が起こってしまい、経営陣が自組織はどれだけ脅威に対して脆弱であるかを認識したところで、助言を求められることが多い。
例を挙げる。ユナイテッド航空3411便の乗客によってオンラインに投稿されたスマートフォン動画を個人的に視聴した人が世界中で約5億人に上がったことを考えてみよう。心をかき乱される動画は、69歳の年配男性が暴行され、屈辱的に飛行機から引きずり降ろされる映像だった。
患者の診察のために帰宅することが必要だった犠牲者の医師は、暴行によって前歯を2本失い、鼻を骨折し、脳震盪を起こして数日入院した。これにより、ユナイテッド航空は謝罪し、ポリシーを変更し、従業員教育の徹底を宣言し、そして大きな訴訟につながりかねない事柄を解決するために、莫大な和解金を支払うこととなった。
悲しいことに、レピュテーションへの損害は組織自らによって引き起こされ、そして発生した事象のためではなく、発生後にCEOが嘘をついたり、稚拙に細工した不誠実なメッセージを連発したりしたことによってCEO自身を貶めたことで増幅され、長期間人々の記憶に残ることだろう。これは広報の失敗だけではなく、リーダーシップ、ポリシー、教育、お客様サービス、そして価値観の失敗である。これが23億USドル企業のCEOである。今にも衝突しようとしているのに気付かず、オートパイロット設定にしたコックピットで昼寝をしているところを突かれたようなものだ。
「乗客引きずり降ろし事件」は、今後何年にもわたって、企業が危機をこのように扱うべきでないという悪い事例として、私を含むPR研究者達によって教本に取り上げられることは確実である。
組織はレピュテーション危機に備えていない
チャリティ団体、政府、片田舎のレストラン、航空会社であろうと、組織が認識しなければならないことがある。現在、私たちはスマートフォンによって一般消費者が倫理的な内部通報者になりうる力を持つ世界でビジネスをしており、持株会社はかつてないほど説明責任を求められている。何事も隠ぺいすることは不可能で、ステークホルダーの意見を聞くことはオプションの選択肢ではなく、必須となっている。
私は過去20年にわたり、数多くの企業の危機管理コミュニケーションプランと対応を指導してきたが、多くの危機は回避でき、早期解決出来るものであったにも関わらず、企業は備えがない状況かあるいは適応する気がなかったために足元をすくわれた。
事実、Institute for Crisis Managementの2016年の最新調査によると、たったの32%の危機が突発的で予測してなかったのに対し、大半の68%は、非倫理的な従業員や短絡なリーダーや、誤った企業ポリシーによって引き起こされたものであり、予測可能で水面下にくすぶっていた問題だったのである。
リスクを予期することが鍵
たいがいの問題と危機は予想可能で、被害は適切なプランニングやトレーニング、従業員に権限を与えて正しい行動をするよう促す共有価値によって導かれることで明らかに縮小することができる。
われわれは、すべてがランク付けされ、レビューされ、シェアされ、フォローされ、好かれ、嫌われるデジタルの世界に生きている。やること、言うことのすべてはオンラインで精査され、キャプチャされる。あなたの会社に関するオンライン・レビューが正確か否かを信じようが信じまいが、認識が現実であり、人々はそれを信じる。
実際のところ、BrightLocalの2016年の調査によると、84%の消費者は個人的な推薦と同程度にオンライン・レビューを信頼するという。かつて口コミで広がっていた言葉は、(PCの)マウスから出た言葉にあっという間に変わってしまった。同様に、91%の消費者がローカルビジネスや、彼らの製品・サービスの質を判断するのにオンライン・レビューを読む。24%の消費者は、悪いレビューがある会社の製品やサービスは購入しないだろうと回答している。
成功するレピュテーションとは、好意を寄せてくれている顧客を通してあなた自身のストーリーを語ってもらうことに段々になってきた。ゆえに、企業は顧客を積極的に注視し、オンラインのコメントに返信しながら、彼らをあたかもゴールドのように扱うべきであり、好意を寄せてくれている顧客や従業員に、彼らの経験をシェアするよう促さなければならない。
最終的に、信頼のないビジネスは燃料のない飛行機のようなものである。飛ぶどころか離陸すらしない。億万長者のビジネスマン、ウォーレン・バフェットの有名な言葉にあるように、「レピュテーションを築くのには20年かかるが、壊れるのは5分である。そのように考えたなら、違った行動をするだろう」。
レピュテーションを管理する10の方法
発生前に本格的な危機を回避するための助言として、レピュテーション管理の「10の戒律」が以下である。
1. 準備すること。リスクを理解し、行動に移せる危機管理プランがある組織は、はるかに効果的に危機を管理できる。戦術家ではなく戦略家になること。
2. 信頼関係の構築。リーダーやコミュニケーターが信頼されていなければ、メッセージに共感は得られない。
3. 火のないところに煙は立たない。コミュニケーターは積極的な火元検知器でなくてはならない。消防士が損害コントロールに励むのとは違い、問題を早期に発見しなければならない。
4. レピュテーションは内側から築かれる。従業員は好意的なレピュテーションを構築するのに重要である。偉大な大使にもなり得るし、最低のレピュテーション暗殺者にもなり得る。あなたの責任において、彼らを無視しなさい。
5. ステークホルダーを知る。鍵となる自分たちのステークホルダーが誰であるかを理解し、信頼の貯水を創造し、危機が表面化した時に組織がより早く元の状態に回復できるよう、信頼関係を構築し、真にコミュニケーションしなさい。
6. ソーシャルメディアを味方につける。組織や、製品、サービス、関係者についてオンラインでどのようなことが言われているか聴いて理解し、素早く、真に、説得力のある返信を確実に行う。
7. 自らの価値を誇りに思うこと。組織は高潔さを持って経営されなければならない。有言実行し、実行していることを発信する。
8. 測定する。測定できないことは管理できない。調査は現在の状態や、改善か後退かを理解する鍵である。
9. 縦割りを排除する。組織は、従業員がそれぞれの役割とポリシーの理解を確実にすることを助けるために、部署や地域に関係なく、効果的にコミュニケーションしなければならない。それによって、従業員はより情報を知ることができ、知的な決断が可能になる。
10. レピュテーション・チームを作る。コミュニケーション部は単体ではレピュテーションを管理できない。脅威を認識し、機会を活用するために定期的に会議をする部門間をまたぐチームを作らなければならない。
ヒース・アップルバウム氏は、トロントに拠点を置くレピュテーション・マネジメントのコンサルティングを行う、エコーコミュニケーション社の社長。ヒースはフォーチュン100社企業からスタートアップ企業まで、北米中のレピュテーション戦略の立案や実行に20年の経験がある。PR学の大学教授で、IABCのGold Quill受賞者、グローバルIABC賞の審査員、そして世界中で70以上のカンファレンスで講演する業界の思考リーダーである。
出典:http://cw.iabc.com/2017/05/02/proactively-manage-reputation/