『経営理念の浸透を考えるワークショップ』 に参加してきました
【日時・場所】
2012年7月6日(金)19:00-20:30
首都大学東京 秋葉原サテライトキャンパス会議室
【コーディネーター】
高尾義明さん (首都大学東京大学院ビジネススクール教授・京都大学経営管理大学院客員教授)
【内容】
(1) 高尾義明・王英燕 『経営理念の浸透』 (有斐閣) の内容紹介及びQ&A
(2) 参加者によるグループ・ディスカッション
(3) 総括ディスカッション及びまとめ
以下、参加して感じたことを記します。
■ 研究の画期的な点
『経営理念の浸透』 (有斐閣) について、改めて画期的な研究だと認識しました。特にそう感じられるのは、個人における理念の浸透について 「組織アイデンティティと個人アイデンティティの融合プロセス」 という定義が与えられた点と、「情緒的共感」 「認知的理解」 「行動関与」 「組織成員性」 からなる理念行動関与のモデル、およびその程度を評価する測定項目が具体的に示された点です。
■ 学術的研究の意義の再認識
普段、このような学術的な論文を読む機会はあまりないのですが、学術研究の意義が深く腑に落ちました。すなわち、上記の2点については、この研究成果を拠りどころとして、次のステップに進むことができます。これまで、理念の浸透について、書籍やセミナーなどを通じて少なからぬことが言われており、それぞれ耳を傾けるべき内容でしたが、残念ながら今回のような実証的な裏づけが必ずしもなく、社会全体としての知の蓄積には限界があったのではないかと振り返って思います。
■ 理念を活用することの意義
ワークショップの議論では、あらためて理念はそもそも必要なのか?それは理念で扱う (解決する) べきマターなのか?という、そもそもの議論ができました。いっぽう、大きな総意としては、人材の多様化のなかで組織パフォーマンスを上げるためには理念は有効である、という認識が社会に定着しつつあることを実感できました。また、私が参加したグループでは、各社の理念の内容は社会にとっての普遍的価値を表した、ある意味当たり前 なものであるという認識で一致していたことも印象的でした。
■ その他
理念浸透においては、上司は 「重要な他者」 であるということが、注目を集めているようです。これに関連して、私の経験から、上司とメンバーで相互のリスペクトの関係が築かれていない職場では、上司を媒介とする理念の共有が難しいという観察を付け加えたいと思います。また、理念と業績やコンピテンシーなどの個人の評価をどう結びつけるかということですが、これには課題が大きいと感じています。すなわち、評価方法に対する評価 (客観性や使いやすさなど) が大きな変数として関わってくるような気がするからです。
30名弱という規模のワークショップでしたが、コーディネーターの高尾さんとの距離感が非常に良かったと思います。最近少人数で集まることのメリットを強く感じています。参加をさせていただきありがとうございました。関係者の皆さんにお礼を申し上げます。
下平博文
IABCジャパン理事(花王株式会社)