『日本一わかりやすい経営理念のつくり方』坂上仁志(中経出版)
普通に読むと“わかりやすい”は“つくり方”にかかりますよね。でも違うのです。英文のタイトルは ”How to create Japan’s easiest-to-understand management principles” なので、経営理念にかかっているのです。こちらの方が意味としては深いですね。わかりやすい経営理念ってどういうものでしょうか?
しかしまあ、ハウ・ツー本丸出しのタイトルで軽薄でさえあります。経営理念がそんなに軽薄でよいの?とつっこみたくなるくらい。著者には気の毒ですが、デザインもふくめて。ところが、これがたいへん良い内容なのです。
理念関連の書籍といえば首都大学東京の高尾教授らの『経営理念の浸透――アイデンティティ・プロセスからの実証分析』が思い浮かびますが、あちらは本格的な学術書ですから、入門書としてはこれがいまのところベストではないでしょうか。しかも120ページちょっとですから、ほんとうに簡単に読めてしまいますが、著者が信念とするそのエッセンスだけが凝縮されています。しかも作成の書式(フォーマット)まで用意されていますから、いたれりつくせりともいえます。
経営理念に携わる方であれば、初心者からベテランまでひろくお勧めできると思います。
下平博文
IABCジャパン理事
(花王株式会社)