サステナビリティ・レポートの今後のトレンド

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2016年7月7日7 キャサリン V. スミス
今日、投資家たちは企業の経営品質やリスクを評価するのに、社会的や環境的実績のKPIを指標としています。 今や、レポートを出すべきかの問題ではなく、何をレポートするべきかが論点となってきています。

Credit: pressmaster / 123RF Stock Photo

企業がレポートを出して得られる最大の価値とは、何でしょうか?企業はどこに実績目標を設定するべきでしょうか?何をどのように計測するべきでしょうか?どのような体制で挑むべきか?レポートの読者はその情報をどのように活用するでしょうか?

基本:サステナレポートはビジネスに利益をもたらす

調査によると透明性を図れている企業は競合との差別化を図れているようです。2011年の調査によると、企業がESG(environmental, social and governance=環境・社会・ガバナンス)の優れている点を述べると、資本コストの削減ができるようです。2012年の調査では、企業市民情報の開示がより正確なアナリスト予測に繋がり、2015年調査では、企業市民活動情報が多いほど肯定的なアナリスト評価に積極的に関連しているようです。
ボストン大学企業市民センターでは、このような利点はビジネスリーダーによって理解されている調査結果を保持しています。2014 State of Corporate Citizenship調査では、多くの役員は将来的に環境や社会的な実績のレポートが増えると信じていることが分かります。
サステナビリティ(持続可能性)レポートの価値命題は明確です。情報開示を増やし、しっかりとした目標を伝えることによってサステナレポートはブランドの信頼力を高め、評判を良くし、リスクを軽減し、実績と革新性を上げることができます。
レポートの質と量は実績の先導者として重要な意味をもたらします。eRevalueの最近の分析によると、例えば、ヴォルクスワーゲン社が排ガス測定の件を暴露された頃、同社の環境関連情報開示は目覚しく減っていたようです。
様々なレポーティングの雛形は企業市民事業者にとって多くの選択肢を与えます。雛形が増えたことにより、企業市民レポートの数も増加しており、グローバルでみても、2000年に800あったレポートが2014年には7,800近くにも増えています。
GRIガイドライン第4版を発行しているサステナビリティに関する国際基準の策定を使命とする非営利団体のGlobal Reporting Initiative (GRI)は、「サステナビリティと報告2025」というサステナビリティ報告や開示に関する将来を示すプロジェクトを最近立ち上げました。このプロジェクトのスポンサーにはボストン大学企業市民センター、Enel, EY, SAPなどがあります。

私たちはどこに向かい、何をするべきか?
「サステナビリティと報告2025」プロジェクトで、GRIは様々な分野の専門家とパートナーシップを結びました。(レポートの最終版は、こちらのリンクhereにあります。)
そのイベントでは将来のレポートの在り方や成功させるための秘訣など活発な意見が交わされました。EnelのCEOであるフランセスコ・ストラッチェ氏は将来のレポートの重要性を説き、「グローバルに持続可能する動き」が起きているので、企業や社会にとってサステナビリティ・レポートは必須であると述べました。ストラッチェ氏は企業の「改革なくして、持続可能性の次のレベルはない」と強調し、Enelの企業市民宣言を例にあげました。2015年9月に国連が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を支援する策として、Enelは「気候変動とその影響に関する至急対応」として二酸化炭素排出を2050年までに削減する目標を掲げました。
多くの参加者がストラッチェ氏の改革への呼びかけに賛同しました。90カ国以上からのリポーターを抱えるGRIのチーフエグゼクティブ、マイケル・ミーハン氏によると、ビジネス判断をよりよくするために取得できるデータ量が飛躍的に伸びていると言っております。しかしながら、柔軟な心で得られるデータ情報を取り入れる企業でなければ革新や創造価値を見出せないと警告もしています。
多くのデータ収集から得られた新しいインサイトの理解だけが今後のトレンドや行動喚起ではありません。
国際的な非政府組織のトランスペアレンシー・インターナショナルの役員であるジャーミン・ブルックス氏は企業への信頼度が低いので、ビジネスリーダーは顧客の信用を取り戻す説明責任のために努力するべきであると述べました。国際的な投資会社で持続可能な投資に特化しているRobeccoSAMのサステナビリティサービス シニアマネージャーのジャン・ガフリ氏は透明性を軽視することで企業が失うものを強調しました。2015年の調査によると、S&P500社の無形財産価値は84%で、1975年から17%も上がっています。ガフリ氏のコメントで有形なものばかりでなく、慈善行為やブランドの評判などの無形なものにもビジネスへの影響を与えることが分かります。企業市民センターとEYの共同調査によると、レポートの2大要素はステークホルダーへの透明性とリスクマネージメントでした。
企業の責任や実績を語る手段の上でサステナビリティ・レポートが非常に大切であると私はよく述べています。効果的に継続可能な企業は必然的に掲げた目標を伝え、達成しています。レポートにより、その掲げている責任に集中することができます。
天然資源に集中していない産業でも、持続可能な責任を掲げることで価値を加えられます。企業の価値に無形財産の比率が上がると共に、企業市民責任はより確固たる価値、資産、適格性を行動に移し、企業の前向きな姿勢を顧客に伝え、評判を上げ、人的資源や従業員の知識を維持し、ブランド価値を高められます。
これらの課題や価値創造の手法は複雑です。よい仕事を効果的に伝えるには、企業は宣言している事柄やそのインパクトをシンプルで分かりやすくしなければなりません。コミュニケーションの一番の敵は複雑さです。明確で活き活きとしたフレーズで具体的な課題にフォーカスしてレポートを作成すれば、企業市民戦略やそのストーリーをより効果的に伝えることができます。
このことは企業や投資家に重要なだけではなく、私たち皆にとって重要なことなのです。
この記事のオリジナルは、Boston College Center for Corporate Citizenship ブログに掲載されており、許可を得て、こちらに再掲載しております。


キャサリン V. スミス
キャサリンはボストン大学マネージメントキャロルスクールの企業市民センター 事務局長であり、非常勤講師でもあります。事務局長としてセンターの全般的活動や戦略を担当しています。

出典元:http://cw.iabc.com/2016/07/07/future-trends-in-sustainability-reporting/