IABC2010トロント参加記(5) 6月23日
2日目~3日目の主だった参加セッションのなかから、いくつかご紹介
します。
変化のはげしい時代における企業の社内信頼形成
(エンプロイコミュニケーションの重要性)
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エンプロイコミュニケーションはIABCにおいてもトップトピックのひとつです。
しかし社内報やイントラの活用法など、ツールレベルの話題はほとんどありま
せん。
今風の言い方をすれば「戦略(社内)広報」となります。
金融危機、景気後退、企業の不正やスキャンダルなど、後ろ向きな話題が続
くこの時代、社内コミュニケーションにおいては「関係構築」とともに、もうひとつ
の重要なトピックが「信頼形成」なのです。
特に国際的な企業や団体の経営およびコミュニケーションに携わる人は地理
的条件、文化、国籍も違う海外オフィスと本社間で社内外の「信頼」をどのよう
にリードしていけばよいか。
ロンドンのビジネススクールの教授によるセッションですが、机上論など皆無。
以下のトピックにおいて非常に具体的な説明がなされました。
・ なぜ信用が今重要なのか
・ 職場では金融危機、景気後退後、誰が誰を信じているか
・ 失われた信用はどのようにしてリカバリーできるか
・ コミュニケーターとしてどのような役割を負うべきか
論旨のポイントは良い意味でも悪い意味でも「感情論」ではなく、それを維持発
展させることがビジネスに反映する(非効率的な業務が無くなる、営業利益の
増加につながる、社員の精神的な健康状態により退社や医療費が減る)こと
を統計的かつ論理的に追っています。
現実的に金融危機や景気後退に際し、マネジメントはリストラやさまざまな変革
モデルを取り入れざるをえませんが、社員がそのまま真意を理解することは難し
いのです。(感情として受容するのはかなりステージがあと)
トップやシニアマネジメントが直接対話の機会を設けるのは大事かもしれません
が現実的には余裕がなく、十分な時間はとれません。
プラクティカルな方法として、ここではミドルマネジメントとコミュニケーション担当
者が「通訳」としてその間に立つ、というアプローチを紹介していました。
当然ここには部署やヒエラルキーを越える施策が必要となります。
「社内通訳者」の役割の重要性に着目し、それを活用している企業やシニアマネ
ジメントは、日本においてはまだ皆無に等しいのではないでしょうか?
多くの場合、日本でコミュニケーションが良い、と言われる企業はシニアマネジメ
ント自身の積極性が目立つ場合がほとんどです。
「双方向の仕組み」(聞く耳を持ったふり)は入れても、それを「下意上達」
する機能、あるいは役割は足りていない気がします。
社内コミュニケーションの相談は近年増えています。しかもツールだけでは解決し
ない問題がほとんどなのです。このセッションは経営レベルの人に対しても説得
力のある内容でした。