目的がクリアでないコミュニケーションは効率が悪い
ところで、そもそもの “そもそも” なのですが、コミュニケーションって何でしょうか?あまりにも漠然とした問いのようですが、この IABCジャパンのサイトに来ているのは、何らかのかたちでコミュニケーションを仕事にしている方だと思いますので、それを前提にたずねています。
まず、ビジネス上のコミュニケーションには “目的” があるということがポイントではないでしょうか。最近、『 企画書のつくり方、見せ方の技術 』 藤村正宏 (あさ出版) という本を読みました。“企画書” という言葉に引っかかることがあり、一冊読んでみようと思い、アマゾンのカスタマーレビューのスコアが高かったので選んだのですが、評判に違わず良い本でした。そこに書かれている企画のポイントに 「 目的は何か 」 をきちんと定めること、とあります。
《 目的というのは
「 どういう人に、どういう行動をとってもらいたいか?」
これだけです。カンタンでしょう。たったこれだけのことを、明確にすればいいんですから・・・》
とありました。ビジネスのコミュニケーションの目的も全く同じだと思います。
「 どういう人に、どういう行動をとってもらいたいか?」 これがマーケティングのコミュニケーションであれば、これくらい明白なことはありません、「 ターゲットに自社の商品やサービスを利用してもらうこと 」 が目的ですね。その結果として、売上やシェアという明解な指標もあります。もちろん、GRPとか知名率とかのプロセスの達成度を測る中間的な指標はありますが、最終的には購買行動を目的とすることに異議はないと思います。
しかしながら、その他のビジネスのコミュニケーションとなると、目的をつくるのはけっこう難しくなりますね。投資家とのコミュニケーションであれば 「 株を持ってもらうこと 」 のように比較的明解にできますが、そうでないと、つい目的は 「 何々を伝えること 」 といったことになりがちではないでしょうか?これは目的としてはあまりにも弱くてもったいない気がします。
コーポレートのコミュニケーションであれば、最終的な指標は比較的明確だと思います。業績の向上と時価総額などの企業価値の向上です。それを指標に置いて、「 どういう人に、どういう行動をとってもらいたいか?」 を、その都度クリアにするのがコミュニケーションの目的といえます。目的がクリアでないと何故もったいないかというと、本来なら手段にすぎないコミュニケーションが自己目的化しがちであり、自己目的化したコミュニケーションは、けっこう効率が悪いと思うからです。何故効率が悪いのか、次回以降そのポイントに少し切り込めればと思います。
これはニュアンスというか気持ちの問題ですが、決して目的のクリアになっていないコミュニケーションは駄目なんだ、と言い放つのがこの記事の本意ではありません。むしろ、それは大切だけどけっこう難しいという認識が共有できて、それではどうしたらビジネスの習い性にできるのか、いっしょに試行錯誤ができる人が出てきてくれればと願っています。(2012年1月27日)
そもそも IABC とは International Association of Business Communicators なのですが、いったいビジネスコミュニケーションとは何を指すのでしょうか?また、そのように概念化することによりどのようなメリットがあるのでしょうか?IABC 本部の考え方を参照しながら、また時にはまわり道を怖れずに、少しずつ考えていきたいと思います。
下平博文
IABCジャパン理事 (花王株式会社)