コミュニケーション部門のオーナーシップとは

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前回、コミュニケーション部門のオーナーシップとは何かというテーマについて皆さんと考えたいと始めたのですが、何となく理念の活動に話しが逸れてしまったようです。ひとつ復唱すれば 「 オーナーがはっきりしない仕事は、ユーザーにとって使いづらい 」 ということでしたね。

しかし、企業のコミュニケーション活動において、コミュニケーション部門が単独でオーナーシップを振るう機会は、実はそんなに多くないのです。これは、キャリアの長い方には改めていうまでもないことです。

これもまた、いまさら改めて・・・の話しなのですが、会社の部門には直接部門と間接部門という分け方があります。会社によって事業部門とコーポレート部門と呼んだり、機能のセグメントも細かいところでは多種多様ですが、おおざっぱに生産、研究開発、マーケティング、販売・・・など、直接商品やサービスに関わり、お金を稼ぐ部門を直接部門、それをサポートする人事や経理、そしてIT・・・など、売上や利益の創出に間接的にタッチするのが間接部門です。広報などのコーポレートのコミュニケーション部門は、いうまでもなく間接部門です。

そう分けると、コーポレート情報のソースは圧倒的に直接部門にあることに気づかないでしょうか。コミュニケーションの最終責任も、少なくともコンテンツ (内容) に関しては直接部門にあるのが普通です。そうしたときに、コーポレートのコミュニケーション部門のオーナーシップをどう考えるのか、これはなかなか難しい問題で、各社けっこう悩んでいるのではないかと思います。

しかし、こう書きながら、私自身オーナーシップ (当事者意識) とイニシアチブ (主導権) を混同するという、あまりよろしくない思考パターンに入り込みそうになっているようです。せっかく自分でオーナーシップというコンセプトを立てたのに・・・。イニシアチブを握るのとは違って、オーナーシップは共同で持つことが可能だというふうに考えたいと思います。その際にポイントとなるのが、先々週のこの欄で触れたコミュニケーションの “目的” ということになると思います。

「 どういう人に、どういう行動をとってもらいたいか?」 というのが目的。これを 「 何々を伝えること 」 という特定の役割で完結するような、射程距離の短いものにしてしまうと、他の役割 ( 機能・手段 ) との利害の対立や、優先順位づけといったノイズが出やすくなり、これが全体の効率を落としてしまいます。自己目的化したコミュニケーションは効率が悪いといったのは、このような意味だったのです。別の言い方をすれば、部分最適を超えた全体最適の実現という視点に立ったときに、オーナーシップを共同で持つということがみえてくるのだと思います。(2012年2月10日)

そもそもIABCとはInternational Association of Business Communicatorsなのですが、いったいビジネスコミュニケーションとは何を指すのでしょうか?また、そのように概念化することによりどのようなメリットがあるのでしょうか?IABC本部の考え方を参照しながら、また時にはまわり道を怖れずに、少しずつ考えていきたいと思います。

 下平博文
IABCジャパン理事 (花王株式会社)