IABCは黒船か、ガイアツか
IABCが、アメリカに本部を置く団体だというと身構える人がいます。欧米型のビジネスのモデルを先進のものとし、彼我 (ひが) の差を強調して日本企業に押し付けるというパターンがあまりにも溢れているためだと思います。ここ半世紀、日本企業は一時の例外はあったものの、基本的にはずっとそのパターンに慣らされてきたのではないでしょうか?その結果、過剰な従順と、その反動としての過剰な反発という心情が二つながら生まれ、IABCの見え方は時々後者を刺激してしまうようです。
特にここ数年は、アメリカの企業のソーシャルメディアの活用が先進事例として紹介されることが多いと思います。例えば、社内コミュニケーションのツールとしてソーシャルメディアを使うとか、CEO自らがツィッターやフェイスブックで情報発信をするとか。
彼我を比較するとどうしても違いに目がいき、優劣という視点を引き込みやすくなります。しかし比較のメリットはそれだけでしょうか?逆に共通する普遍性も見えてくるといえないでしょうか。ソーシャルメディアの指南書としてよく知られている 『 デジタル・リーダーシップ 』 を監訳した関西学院大学の北村秀実さんの講演を以前に聴いたのですが、非常に印象的だったのは、これからのデジタル・コミュニケーションのコア・バリューは、誠実性と透明性という指摘でした。これって新しいですか? むしろ今も昔も変わらない、企業活動の最も基本となるバリューではないでしょうか。
つまり、新しいツールの普及によりコミュニケーションの民主化が起こり、企業がこれまでのように情報をコントロールできなくなると、体質として誠実性と透明性 ―― Authenticity & Transparency ―― を素朴に備えた企業が有利になるということです。これは日本型企業にとって決して悪い流れではないはずです。そして、これから企業がコミュニケーションにおいて何を重視すべきなのか、優先順位もまたそこにあるということです。デジタルによるノウハウや手法はその後の話しであり、それぞれのカルチャーに合わせてカスタマイズを考えればよい、ということになるのではないでしょうか。(2012年3月2日)
そもそもIABCとはInternational Association of Business Communicatorsなのですが、いったいビジネスコミュニケーションとは何を指すのでしょうか?また、そのように概念化することによりどのようなメリットがあるのでしょうか?IABC本部の考え方を参照しながら、また時にはまわり道を怖れずに、少しずつ考えていきたいと思います。
下平博文
IABCジャパン理事 (花王株式会社)