レピュテーションとは何か

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前回少し触れた 『 デジタル・リーダーシップ 』 のなかに印象に残る文章があったので、今回はそれを紹介します。

《 多くのコミュニケーション責任者は、ブランドとレピュテーションを同義語として考えている。それはよくあることだが、致命的な間違いである。CEC (米国のコンサルタント団体) の調査によれば、調査対象のコーポレート・コミュニケーション担当者のうち65%は、レピュテーション構築とブランド構築は同じであると信じていた。しかし実際のところ、これらは対極にある手段である。企業ブランドは、組織の独自の価値提案をステークホルダーに対して行うが、企業のレピュテーションはステークホルダーからの期待に対する達成度を示す 》 p.102

“ レピュテーション ” とは、訳語では 「 評判・名声 」 といったものになりますが、 けっこう便利に使われる言葉ではないでしょうか。社外コミュニケーションの目的に 「 会社のレピュテーションを上げること 」 などと書かれているのをいろいろなところで見掛けるような気がします。しかしレピュテーションとはいったい何でしょうか? ここでは 「 ステークホルダーからの期待に対する達成度 」 と定義されています。

ステークホルダーからの期待に、何によって応えるのでしょうか? 核となるのは、その企業が提供している仕事 (商品やサービス) ということになります。何らかの期待をもってその企業の商品やサービスを購入し、実感で納得できればレピュテーションが上がったといえると思います。そして核となる商品やサービスの背景には、企業のさまざまな活動や考え方があり、それを紹介するのが通常のコーポレート・コミュニケーションの役割です。

ブランドとレピュテーションは違う、という少しトリッキーな言い方で筆者が伝えたかったことは、従来の ”一方向の”  コミュニケーション (ブランド構築) に対し、これからの時代はもっとステークホルダーの視点に立った ”双方向の” コミュニケーション (レピュテーション構築) が必要であるということ。同時に、ともすれば企業に対する期待を過剰にあおることを厭わないこれまでのアプローチはもはや通用せず、事業の実態に即した誠実なコミュニケーションが求められるということだと思います。その背景には、デジタル・ツールによるコミュニケーションの民主化があります。

それにしても 「 ステークホルダーからの期待に対する達成度 」 という定義は、企業のメッセージを具体化するときには、なかなか示唆に富むものではないでしょうか。これに従えば、企業のコミュニケーションのコンテンツ (内容) の核は、私たちに 「 何を期待してください 」 ということを明確にすることであり、さらにそれを強く裏付けるものとして、私たちは 「 その達成度を、こう測っています 」 という判断軸を明確にすることだと思います。これは例えば成果指標のようなものを想起させます。企業のメッセージは、企業の哲学や夢を語るだけではなく、社会に対して自らの成果指標を開示し、これを社会と共有するもの、と一般化できるかもしれません。 (2012年3月9日)

そもそもIABCとはInternational Association of Business Communicatorsなのですが、いったいビジネスコミュニケーションとは何を指すのでしょうか?また、そのように概念化することによりどのようなメリットがあるのでしょうか?IABC本部の考え方を参照しながら、また時にはまわり道を怖れずに、少しずつ考えていきたいと思います。

下平博文
IABCジャパン理事 (花王株式会社)