WC報告会に参加して考えたこと

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先週、2012年IABCワールドカンファレンス(WC)の報告会が行われました。報告をしたのはIABCジャパン代表の雨宮さんです。私自身は、本年のシカゴ大会には参加できなかったので、こうした機会は貴重なものです。今回は、雨宮さんのレポートを聞きながら頭に浮かんだことを記します。

■     ビジネスはエコシステムであるということ

エコシステム (生態系) の本質は、変化、相互作用、多様性にあると理解していますが、これはビジネス社会のメタファーとして、かなり優れているものだと思います。間接的とはいえIABCのワールドカンファレンスの活気に触れると、エコシステムが持つようなダイナミズムを感じることができます。

いまでもジャパンメンバーの間で語り草になっているものに3年前のゼネラルモータース (GM) の事例があります。日本でいうリーマンショック、景気後退に端を発した販売不振により破綻を宣告されたGMが再上場をして復活するまでの過程を、社員コミュニケーションの視点から紹介したものですが、その情報開示のオープンさは衝撃的でした。

どうしてここまで社内の話しをオープンにするのだろう?また、できるのだろう?という素朴な疑問が湧いたのですが、なかなかそれを適切な質問に置き換えることができず、その答えは私のなかで今日まで幾つかの仮説にとどまっています。そのひとつは、オープンにして、他社や広く社会とシェアするのが社会的に正しい行動だという合意があること。つまり、企業というのは自社内で閉じたシステムではなく、より広いシステムの一員として存在をしているという強い自覚があるのではないかというものです。

■     Authenticity & Transparency

ここで思い出すのが以前にこの欄でも紹介した ”Authenticity & Transparency” という二つの言葉です。今年の報告でも、キーワードとして取り上げられていたようです。Authenticity というのは日本語に訳しにくい言葉だと思いますが、GMのケースでも、当事者に社内・外の対応が Authenticity を満たすものである、という自負があったからこそオープンにできたということがあるでしょう。以前、Accountability = 説明責任ということがよくいわれましたが、分かりやすさやポジティブな感じから言葉としては Authenticity & Transparency のほうが、私としては好ましく感じられます。こんにちのビジネス・コミュニケーションにおいては最上位・最強のコンセプトといえるかもしれません。今回のWCの際立ったキーワードでいえば ”The Naked Company” でしょうか。

■     Be Exceptional

今年のワールドカンファレンスのテーマは、“Be Exceptional” というものでした。報告にもあったように 「際立った存在になれ」 といった感じでしょうか。私自身はちょっとピンときているとは言いがたい感じです。昨年は ”New Normal” というもので、これにはとても共感を覚えました。リーマンショックを境に、ビジネスのパラダイムは変わった、もうかつても世界が戻ってくるのを待つのはやめて(あきらめて)新しい常識の中を歩みだそうというメッセージを、そこから読み取ることができたからです。

ひるがえって、たとえば日本のある地方のリゾート地では、いまだ右肩上がりのバブルの再来を待ち望むマインドが残っているという話しを聞いたことがあります。私自身を取り巻くビジネス社会の心理も、もしかしたらこれと似たり寄ったりではないか・・・と、つい周りを見回してしまいますが、どうなのでしょうか。

■     Globish

会場の皆が耳をそばだてたのは、カンファレンスで使われる英語が、だいぶネイティブではないメンバーにも配慮するものになったという報告でした。いわゆるグロービッシュですね。IABCの ”I” は International の ”I” なのですが、それにしては3年前に参加した印象では、ちょっと北米ドメスティックな匂いもしました。そうした体質から、急速に脱却しつつあるのかもしれません。そうだとすれば私たちにとっては、けっこう切実にありがたい動きといえるのではないでしょうか。

同じくIABCジャパンの理事を務める林さんのレポートも併せてお読みくださいhttp://jungae.exblog.jp/18524202/。(2012年8月1日)

そもそもIABCとはInternational Association of Business Communicatorsなのですが、いったいビジネスコミュニケーションとは何を指すのでしょうか?また、そのように概念化することによりどのようなメリットがあるのでしょうか?IABC本部の考え方を参照しながら、また時にはまわり道を怖れずに、少しずつ考えていきたいと思います。

下平博文
IABCジャパン理事 (花王株式会社)