グリーンコミュニケーションのいま ― IABCワールドカンファレンス・レポート(4)
下平博文
IABCジャパン理事(花王株式会社)
IABCワールドカンファレンスのレポートの続きです。
今回のカンファレンスでは、ビジネスの世界でますます彼我(北米と日本)の違いが小さくなってきたと感じることがしばしばありました。CSRやサステナビリティの領域でも同様です。そのひとつ、今回は “Communicating Your Green Success” というセッションを紹介しようと思います。スピーカーは、ミュージアムなどの展示関係のデザインを手掛けているBowman Design Groupという会社のメンバーです。セッションは3部構成になっています。
■ ビジネスに影響を与える新しい環境リスク (New Environmental Risks to Your Business)
■ 顧客の期待の変化 (The New World of Customer Expectation)
■ 新しい世界におけるコミュニケーション (Communicating in the New World)
最初のリスクは人口の増加や、気候変動といったよく知られたことの一覧にとどまるので省略します。ちなみに環境学の安井至さんも言及していますが、国際的には「温暖化」という言葉はあまり使われず「気候変動(climate change)」というのが一般的なようです。
*参考まで、安井さんは現象をより正しく表しているという科学者の視点から、「温暖化」を「気候変動」に変えよう、と提案をしています(http://www.yasuienv.net/GWtoCC.htm)。
次の顧客の期待の変化のパートでは、CSRが変わった(CSR has changed)として次のようにまとめられています。
■ 通常のビジネス+社会貢献、という枠組みでは通用しなくなった (Business as usual + charitable contributions no longer works)
■ 顧客もステークホルダーもより一層の透明性を要求している (Customers and stakeholders are demanding greater transparency)
■ 環境基準を設ける企業がでてきた、たとえばウォルマート (Some companies (e.g., Walmart) set environmental performance standards)
■ 経済的な結果だけではなく、社会、環境も含めた評価を公表するいわゆるトリプル・ボトムラインを要求する消費者が増えてきた (More consumers are demanding triple bottom line performance)
■ スマートフォンを持っていれば、誰でも告発者や活動家になる可能性がある (Anybody with a smart phone is a potential whistleblower and activist)
そして、このような新しい世界でのコミュニケーションのポイントとして、3点を挙げています。
■ だれも完璧を期待しているわけではないことを忘れないこと (Nobody expects perfection)
■ とりあえずグリーンに向かっているだけでOK (It’s OK to be “going green”)
■ できない約束は禁物 (Over promising is risky)
このあと、GE、ナイキといった何社かのCSRのサイトやレポートを紹介しますが、特に大きく取り上げていたのは、CLIFという食品会社のサイトです。“Who we are”ページにリンクをはっておきます(http://www.clifbar.com/soul/who_we_are/)。
このなかの企業理念に相当するような 「5つの願い」、つまり 「地球の、コミュニティの、従業員の、ビジネスの、ブランドのサステナビリティを願う」 というメッセージは、シンプル、ストレートだけに真っ直ぐにこちらの心に飛び込んでくるような感じがあります。
こうしてみるとなんの変哲もない内容ですが、要点がシンプルにまとまっています。もともとCSRやサステナビリティは複雑なものだけに、これを扱うのに立ち返るべきシンプルな枠組みをキープするというのは一つの見識ではないかと思いました。
このセッションの本部からの紹介は下記のアドレスにあります。
http://wc.iabc.com/sessions/communicating-your-green-success-show-and-tell-in-the-marketplace/
スピーカーのサイトです。
http://tombowman.com/bowman-global-change/