イノベーションを推進したい?即興をお試しあれ

IABC's contents (Japanese)

2016年5月4日 カレン・ハフ

即興パフォーマーや即興演奏家は、”集中とフロー”と呼ばれる魔法のような状態が存在することを知っている。この状態は、一団あるいは一人のパフォーマーがアドリブで創作する状態に入り、まさにその瞬間に何の抑制もない中で起こるのである。この状態においてこそ、科学者ですら無意識のブレークスルーや着想を報告しているのである。このとき、脳は最も創造的でイノベーションを起こしやすい――即興状態なのである。

我々の現代世界ではこの無意識な創造状態に達することが段々と難しくなってきている。元凶は何か。同時に複数の仕事をするからだ。

即興の脳科学

この10年、多くの研究が指摘していることだが、同時に複数の仕事をすることは認識上有害な影響を及ぼす。最も若い世代、デジタル時代に生まれ、同時に複数の仕事をする世界にいる世代ですら、被害にあっている。ロンドン大学の精神病研究所の研究によれば、同時に複数の仕事をすることは一時的にIQを低下させることが示唆されている幸いにも、損失は短期のもので、思考して働く能力は我々が集中すれば正常に戻る。では我々が同時に複数の仕事をして脳を低レベルにしてしまうならば、いかにして創作する能力を回復して発明や、偉大な小説、病気の治療法を創り出せるのであろうか。

即興がその自然な答えとなる。即興は脳を自由に働かせる。即興は実際に、創作の自由なフロー過程に妨げとなる脳の領域をシャットダウンします。気が散ることは排除され、自己意識は絶たれます。それは単純に集中の状態に入らざるを得なくなります。

2009年、アーロン・バーコウィッツとダニエル・アンサリの共同研究は、音楽家と音楽家でない人の脳の活動を調べました。この研究はNeuroImage誌で発表されましたが、熟練の音楽家が即興している時には、通常とは異なる精神状態に入ることが示唆されました。その時彼らの脳は、光る物体や動き、音や色など周囲の刺激で気を散らせてしまう右側頭頭頂接合部をシャットダウンするのです。

アマンダ・ローズ・マルチネスは、Seed Magazine誌に「即興の脳」と題して寄稿し、「言い換えると、即興中の人の脳は、自制心を働かせる領域をダウンさせ、上り調子に自己表現を駆り立てる領域を事実上無抑制に働かせている。」

即興を実践する

真の即興は、パフォーマーや運動選手、ミュージシャンや科学者が長年の経験から意識下と無意識下が混在した状態に入った時に生じるものです。ある人が特定の主題について相当な知識を持っている、あるいは長年に渡って何かをやってきたために、もはや全く意識せずにいるとき、彼らは「台本なし」でやる事が可能です。彼らは計画や意識的な編集を必要とせずに創作したり、ダンスしたり、あるいは外国語を話し始めるのです。これまでの年月の全ての経験を総動員して、新しい材料を投げつけるのです。この「フロー」な状態では、彼らはもはや意識的にコントロールしておらず、イノベーションが彼らから湧き出てくるのです。

ここで素晴らしいことには、ほとんど誰もがこの状態になることができることです;エンジニア、数学者そして修理工が時間の感覚が無くなるほど没頭する状態に入るのは、解決しなければならない難問や想像力を掻き立てられるプロジェクトに直面した時であることがしばしば報告されている。そこで質問です、あなたが絶えずやってきたのは何ですか?あなたの特別な能力は何ですか?全くの没頭状態に入る、時間も気になることも消え失せる方法を作ってみましょう。あなたは以下のことができますか:

  • 全くの没頭をさせておき:気が散ることをすべて排除する
  • 気ままでいて:傍観者を排除する
  • 遊びを許し:何も悪いことがなくすべてが楽しい

狙いは脳から手綱を離して、脳を自由に集中させて働くよう許すことです。ある主題に深く入り込むことができると、あなたは自分が知っていることから即興し始めることができ、新たな道や新たなプロセス、新たなイノベーションを作り出していくのです。即興は、美しいほど深く没頭するプロセスであり、あなたの脳がいかにすべきかを既に知っていることなのです。

ニューオリンズで6月5-8日開催の2016 IABC世界大会で、カレン・ホフのセッション“Creativity + Application = Innovation”に参加ください。

カレン・ハフ

カレン・ハフはImprovEdge社の創設者かつCEOで、AmazonのNo.1ベストセラー著者であり、the Huffington Postへの寄稿者でもあります。著書に「Be the Best Bad Presenter Ever: Break the Rules, Make Mistakes and Win Them Over」(最強の最悪プレゼンターでありなさい:ルールを破り、間違いをしてそれでも聴衆を味方に引き込む)。受賞は、Stevie International年間イノベーティブカンパニー・シルバー賞、優秀な女性オーナーのビジネスに贈られるthe Athena PowerLink賞。イノベーションにおける即興行動に関する新刊が2017年発行予定。詳細はImprovEdge.com
掲載は、特集、2016年5月

記事原文はこちら:
http://cw.iabc.com/2016/05/04/use-improvisation-combat-effects-multitasking-get-innovation/