CSRは実は大きなパラダイムの変化であった
コミュニケーション担当部署のオーナーシップという観点からみたとき、大きく枠組みを変えたのが、私見ではやはりCSR (Corporate Social Responsibility = 企業の社会的責任 ) だったと思います。CSRのベースとなるファクトやデータの多くは直接部門 ( 事業部門 ) から出てきます。しかし、それを貫くメッセージの構築やコミュニケーションは、直接部門のどこかに委ねることはできません。間接部門 ( コーポレート部門 )、それも多くの場合コミュニケーションに関わる部署がオーナーにならざるをえなかったのではないでしょうか。その意味では、コミュニケーション部門がオーナーシップを持つようになったテーマのなかでは、これまでになく大きなものがCSRだったと思います。
当初CSRは、どの会社でも進め方に少なからぬ戸惑いがあったようですが、その要因の一つは、このオーナーシップの在り処 (ありか) を巡る曖昧さ、あるいは空白によるものではなかったでしょうか。もちろん、現在では多くの企業でCSRを推進する体制が整えられてきました。そしてこうしてみると、CSRの先駆けとなった環境や社会貢献、ガバナンスなど、間接部門がコミュニケーションのオーナーシップを持つ案件が1990年代の後半から増加してきたのに気づきます。
整理をすると、他部門とオーナーシップを共有しながら、事業の課題の解決にコミュニケーションによって貢献するという従来の機能。それに加え、自らがコミュニケーションのオーナーシップを積極的に持ち、旗を振るという、いってみれば横串と縦串、この二つの機能がいまのコミュニケーション部門にはあるということです。
このオーナーシップの在り処は、仕事の枠組みや、進め方、あるいはメンバーのモチベーションなど、けっこう広範な影響を及ぼす観点だと思いますので、関係者で折に触れて確認するのがよいのではないかと思います。そして付け加えるなら、できるだけ積極的にオーナーシップを “取りにいった” 方が仕事は面白くなる、ということが一般論としていえるように思いますがいかがでしょうか?(2012年2月17日)
そもそもIABCとはInternational Association of Business Communicatorsなのですが、いったいビジネスコミュニケーションとは何を指すのでしょうか?また、そのように概念化することによりどのようなメリットがあるのでしょうか?IABC本部の考え方を参照しながら、また時にはまわり道を怖れずに、少しずつ考えていきたいと思います。
下平博文
IABCジャパン理事 (花王株式会社)