2013年IABCワールドカンファレンス報告会実施しました

Events

IABCジャパンは2013年7月23日(火)、飯田橋の東京しごとセンターで、IABCワールドカンファレンスの報告会を開催しました。
IABCワールドカンファレンスは、世界中からビジネスコミュニケーションにかかわるプロが集まる世界大会で、毎年6月下旬に開催されています。今年は日本から、味の素、花王をはじめ、5名のメンバーが参加しました。報告会では、参加した5人が登壇し、それぞれ印象に残ったセッションの概要、感化されたり刺激を受けたりしたポイントを紹介しました。

なお、今年のワールドカンファレンスの概要は以下をご参照ください。
http://wc.iabc.com/

今回のワールドカンファレンスの参加者からは、カンファレンス全体を通して、とくに「Engagement」というキーワードが多くのセッションで頻出していたと紹介されました。
「Engagement」とは、社員の会社に対する「愛着心」や「コミットメント」などを発展させたような概念で、個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう結びつきのある関係のことを意味するものです。きちんと話し合いが行われていて、社員が、会社や組織が目指すものや大事にしているものを理解している状態とも言えるかもしれません。

「Engagement」が頻出していたこともあり、参加した5人のうち、3人からはインターナル・コミュニケーション、とくにビヘイビア・コミュニケーションの領域について、報告されたことが印象的でした。
従業員へのブランドの浸透を通じて組織と従業員の「Engagement」を実現した企業事例の報告では、ブランドをきちんと明文化し、複数のメディアを使って繰り返し定着を図る、評価・表彰制度など人事施策と連携をとる、など、いわば「定石」ともいえるコミュニケーションの施策をこつこつと実施していくことの大切さを再認識できるものでした。

ほかにも、コミュニケーション活動の評価・効果測定が十分に行われていない実態がある、コミュニケーションによって社員の行動変容まで実現するためには、情報の受け手の立場から、知識やデータなどの合理的で事実ベースの情報だけでなく、情緒的でストーリー性のある感覚的な情報をシンプルに伝えることの必要性を改めて感じた、などの報告がありました。

情報をシンプルに、情緒的に伝えることの重要性が増していることは、様々なソーシャルメディアが登場してきていることからも感じることができます。PintarestやVine、Flickrなど写真や数秒単位の動画を中心に見せるソーシャルメディアが勃興しています。情報量が増え続ける今、ビジュアル・コミュニケーションの重要性が増していると言えるでしょう。
こうした中で、ソーシャルメディアなどオンライン・コミュニケーションのセッションを中心に参加したメンバーの報告では、ソーシャルメディアは顧客や社会とのつながりを強化できる一方で、成功‐失敗、賞賛‐批判が表裏一体の環境にあるとの指摘がありました。企業は、地道に社員などの内部のステークホルダーと信頼関係を構築し、ありきたりのガイドラインや行動規範ではなく、独自にしっかりと考えながらルールを作り上げていくことが何よりも重要で、仮にソーシャルメディアで組織が誹謗中傷されたとしても、自分たちの実績をまず信じ、過剰反応せずに毅然とした態度で対応することが求められるとしています。

そのほか、企業変革を実現した著名な4人のCEOたちのディスカッションでは、「世界の人々に貢献する」というミッションを社員に示すことで会社が変わった、CSRが発展して戦略の中心になってきているなど、CSV(Creating Shared Value)に近い概念が語り合われていたようです。社会‐企業‐社員の結びつきは、日本でも東日本大震災以降に注目されています。

こうして紹介すると、どの指摘も当たり前のことではあります。ただ、物事の本質とは普遍的で地味なことが多いものです。
活動の評価・効果測定が大きな課題としてあげられるなど、日本と変わらない部分もあるようです。目的をはっきりさせ、目標を明瞭に設定し、仮説を構築して、実行し検証するという科学的な側面が、ビジネス・コミュニケーションの領域ではまだ世界的に見ても足りていないのかもしれません。

質疑は、「ストーリーを基に情報発信している日本企業の事例はあるか」「行動変容のためのブランド浸透では内部から反発がないのか」「日本と欧米の状況はどの程度異なるのか」といった質問が出されるなど活発でした。

一方で、そもそもIABCジャパンの存在意義やワールドカンファレンスの参加状況、日常的な取り組みがグローバルでのビジネス・コミュニケーターの育成につながっているのか、という貴重なご意見もいただきました。
IABCジャパンは設立から3年が経ちました。「3」というひとつの数字の区切りを踏まえ、あらためて存在意義を問い直すとともに、ビジネス・コミュニケーションを考える場を日本国内でもしっかりと創り出して行きたいと思います。