『社長、御社の「経営理念」が会社を潰す!』 白潟敏朗 

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社内コミュニケーション・企業理念・企業文化に関わる書籍を紹介しています。今回取り上げるのは 『社長、御社の「経営理念」が会社を潰す!』 白潟敏朗 中経出版 です。
 経営理念が会社を潰す!とは、なんと挑発的なタイトルでしょうか。罠とわかっていても、理念担当者の私としては手に取ってみないわけにはいきません。で、結論からいえば、経営理念を活用するためのマニュアルとして、かなりの良書といえるものでした。
 話しの筋としては次のようになります。

  • 美辞麗句の経営理念は、経営者にとっても社員にとっても腹に落ちず、活用されにくい
  • そうした経営理念ではなく、社長の考える会社の 「存在意義」 と、これだけはゆずれない 「こだわり」 を、社長のわかりやすい言葉で表現する
  • 「こだわり」 を、具体的な一覧にして、どのような行動を取ればそれが実現されるのか社員に考えさせるなど、浸透を図る
  • 「存在意義」 と 「こだわり」 を共有できる社員が集まることにより、組織の生産性があがる

 書籍そのものは、小さな会社を念頭に置いて執筆されていますが、大きな会社のマネジャーに置き換えてみても、まったく同じ話しが成り立つのではないかと思います。しかも、いまある理念を変更したり、無視したりする必要はありません。美辞麗句の裏にある企業のこころのようなものを、「その仕事は何のために存在するのか(=存在意義)」、そのために 「何にこだわり、どのように考え、行動するのか」 といった事柄に置き換え、マネジャーが自身の肉声で語ることです。
 多くの会社での理念浸透活動というものは、多かれ少なかれ、こういったプログラムをふくんでいるのではないでしょうか。また、もっと “そもそも” でいえば、これは優れたリーダーやマネジャーといわれる人たちが、誰にいわれるでもなく実践していることではないかと思います。
 しかし、かといってこの本の価値が下がるわけではありません。現場における理念経営というべきものが、ガイドに従って着実に実践できるようになっており、意欲のある経営者や管理職の方にお勧めしたいと思います。

【今回紹介した本】
白潟敏朗 (しらがたとしろう)『社長、御社の「経営理念」が会社を潰す!』 中経出版 2012

下平博文
IABCジャパン 理事
(花王株式会社)