我々は”コミュニケーター”なのか、”コミュニケーション・プロフェッショナル”なのか?

IABC's contents (Japanese)

IABCフェローであり、プロフェッショナルとして世界的に活躍するPriya Bates(プリヤ・ベイツ)氏は、私たち自身の呼称表現について、問いを投げかけます。

IABCはプロフェッショナルキャリアを形成する場でもありますが、そもそも「コミュニケーター」とは何でしょうか。このようなテーマでのセミナーは2019年10月にも開催しましたが、今回は、ベイツ氏の問いかけを追いながら、自分たち自身について考えるきっかけを得たいと思い、IABC ジャパンで和訳コンテンツを作成しました。原文は下記リンク先をご参照下さい。

Are We Communicators or Communication Professionals?

私は、私たちが「コミュニケーター」と「コミュニケーション職として生計を立てている人たち」とを特に意識せず言いあらわしがちであることに気づきます。

このような気づきは、私たちが、プロとして人々や組織の可能性を拡げたり、エンゲージさせたり、力づけたりするコミュニケーションをしたり、個人や集団の力を活用しようとする営みの始まりであると感じます。

私はコミュニケーションのプロフェッショナルです。私は職業としてコミュニケーションを勉強しました。その専門知識は、地域でも、国内でも、国際的にも認められています。私は2004年に認定ビジネスコミュニケーター(ABC)になりました。グローバルコミュニケーション認定評議会(GCCC)を通じて、最初のコミュニケーション管理プロフェッショナル(CMP)として認定され、最近では戦略的コミュニケーション管理プロフェッショナル(SCMP)として認定されました。倫理規定を持つグローバル専門家協会(IABC)のメンバーでもあります。
それでも、私たちはしばしば、お互いに、そして専門家間で、自分のことを「コミュニケーター」と呼んでいます。実際、IABCはInternational Association of Business Communicators(「コミュニケーターズ」)という名称です。

しかし最近、私は考えてしまいます。私たちはこのような呼び方によって、私たち自身のブランドを害していないか?私たち自身を言い表す言葉は私たち自身のブランドと評判にどのように影響するのか?と。

「コミュニケーター」と呼ぶことの何が悪いのか?
実のところ、誰もがコミュニケーターです。つまり、コミュニケーションの専門職について勉強して学んだ人と、言葉や行動(または言葉や行動を伴わずに)を介して単にコミュニケーションをとる人との間に違いはありません。
私たちのリーダーはコミュニケーターであり、従業員はコミュニケーターであり、子供たちはコミュニケーターであり、ペットはコミュニケーターです。

ブランドと評判の観点からは、私たちの活動を差別化することは困難です。 「コミュニケーター」という表現を主張する場合、少なくとも「プロフェッショナル・コミュニケーター」や「ビジネス・コミュニケーター」のように、単語の前に修飾語を追加する必要があります。

また、プロフェッショナルは規制・認定されるものです。

私は同僚と、「私たちは会計士や弁護士のような法規制された職業ではないため、コミュニケーション・プロフェッショナルとは言えない」という事実について、議論したことを覚えています。

これについて話しましょう。
人事は、認定プロセスを通じて、人事プロフェッショナルとしてのブランドを刷新するという素晴らしい仕事をしました。プロジェクト管理のプロフェッショナル(PMP)も同じことをしています。彼らは自分たちをプロフェッショナルと呼ぶのに十分だと思っています。ただ、私たちがそうしていないことが、本当のイシューでしょうか?

自分をコミュニケーションの専門家と呼ぶには、認定を受ける必要がありますか?
私は、認定プロセスこそがイシューであるという状況であるとは思いません。むしろ、私は自分自身をどのように言い表すかから始め、また、認定されていない優れたコミュニケーション・プロフェッショナルが存在するという事実を認めることから始めたいと思います。

そのように言いながらも、私はコミュニケーションの専門家(ABC、APR、CIPR)の認定プロセスを強く支持しており、以下のような理由でIABCが後援する新しいGCCC認定プロセスを気に入っています。

  • これは、基礎スキルからスペシャリスト/ジェネラリストの役割、ビジネスリーダーへの戦略的アドバイザーまで、コミュニケーション・プロフェッショナルのためのキャリアロードマップです
  • すべてのレベルにおいて、戦略と結果にフォーカスを当てています。コミュニケーションのためのコミュニケーションではなく、影響力と結果へのインパクトのためのコミュニケーションを扱います
  • 私たちの仕事をすることができると主張する私たちの組織の人々の大半は、認定試験に合格することができませんでした。
    実際、コミュニケーションの専門家であると主張する多くの人は、単に(与えられた仕事という意味での)戦術を実施するだけの人であることが明らかになるかもしれません。たとえそうでも、彼らは自分自身をコミュニケーターと呼び続けることができます。

認定プロセスにより、コミュニケーションの専門家であると主張する人は、証明された認定コミュニケーション専門家(CMP)およびコミュニケーション戦略家(SCMP)であることを、誇りをもって表すことができるでしょう。

私たちの言語は重要です
私はコンサルタントおよび講演者として、実務家たちに毎日会います。

その場で、私は何度も言ってきました。私たちのイシューは、能力性と可用性についてではなく、勇気と自信についてです。私たちは勇気ある会話をし、私たちの役割と組織への影響を促進する必要があります。私たちはまた、重要ではない仕事にノーと言う必要があります。

私は確信しています。適切な計画、適切なアイデア、適切なリーダーを抱える組織が、戦略的にコミュニケーションをとっていないために牽引力や行動力を得ることができないということが非常に多くあるということを。受身志向から目的志向へ。戦術から戦略へ。インプリメンターからインフルエンサーへ。そのような姿勢で、単なるアウトプットではなくビジネスの成果を測定する勇気をもって活動すれば、コミュニケーションの専門家としての私たちの役割に疑問を投げかける人はいなくなるでしょう。

ここに私の作ったコミュニケーション職についての用語集があります:

  • コミュニケーター:言語/非言語を通じてコミュニケーションする人。
  • コミュニケーション・プラクティショナー:組織のためにコミュニケーションをとっている人たちを指すとき。彼らは必ずしも彼ら自身を専門家として言及しているわけではありませんし、そうであるかどうかはわかりません。彼らは組織にコミュニケーションを提供します。正式なトレーニングを受けていない、またはコミュニケーションスキルや戦略の経験がない人もいます。
  • コミュニケーション・プロフェッショナル:組織が結果を出せるようにサポートするためのコミュニケーションスキルまたは戦略についてのトレーニングと経験がある人
  • 認定コミュニケーション専門家:専門家協会を通じてコミュニケーション専門家として認定されています。
  • 認定コミュニケーション管理プロフェッショナル(CMP):スペシャリスト/ジェネラリストレベルのグローバルコミュニケーション認定評議会を通じて認定されています。
  • 認定戦略的コミュニケーション管理プロフェッショナル(SCMP):戦略的アドバイザーレベルのグローバルコミュニケーション認定評議会を通じて認定されます。

この内容をご覧いただいてどのように感じますか?追加または変更すべき他の用語はありますか?

 

おわりに

コミュニケーターとしての自分自身をどのように言い表すかを議論する際には、その表現が導く結果についてよく考えてください。
その言い表し方は私たちが職業として進歩するのを助けますか?それは何らかの形で私たちを前進させますか?
それは私たち自身について、誤解を与え続けるものであってはならない。そのように考えます。

著者について
Priya Bates(プリヤ・ベイツ)氏。SCMP、MC、ABC(それぞれコミュニケーターの認定資格)。IABCフェロー、Inner Strength Communication社の社長。成果を徹底的に推進することに情熱を傾けている、プロのコミュニケーターで、その功績は世界中で認められている。戦略的インターナルコミュニケーション、エンゲージメント、ブランディング、チェンジマネジメント等を広くカバー。彼女は20年以上のキャリアの中で、Loblaw Companies Limited、HP Canada、Compaq Canada、The Ontario Nurses Associationなどの組織のコミュニケーションを主導。
彼女のクライアントには、テクノロジー、小売、金融、ヘルスケア、鉱業、製造セクターにわたる組織やリーダーが含まれる。

2020年6月開催のIABCワールドカンファレンス登壇。
テーマ “Shift: From communicator to communication professional”